怖い夢(橋本)

怖い夢をみた。

この興味をそそらない書き出しはなんだろうと思わなくもないが、せっかく怖い夢を観みたのだから、とりあえず書いておくことにする。
私の記憶がある中でダントツに怖い夢だ。

それまでにダントツに怖かった夢は、小学校1年まで遡る。
記憶力に致命的な欠陥がある私としては、驚異的な記憶であり、今でもその夢はくっきりと、色も臭いも覚えている。

小学一年生の私は怖がりであった。
自宅の両親の部屋の奥にある本棚が怖かった。
昼間何だか薄暗いというのもあるし、置いてある本が何となく怖かったのだ。
何が怖かったかと言うと、宇宙関係の本だ。
宇宙関係と言っても天文的なほうではなく、宇宙人関係の本である。
その本を開くと

「恐怖!火星人!」「金星人の怪しい眼差し!」「既に地球にいる!」

等、何も悪いことをしていない宇宙人達に、やたら憎悪を煽るキャプションが踊る。
プラス、挿絵は妙に禍々しい宇宙人のイラスト付だったりもした。
(別に両親にそういうオカルト趣味があったとは思えない。今思えばその横には今でも私が大好きな開高健の「オーパ!」や、東海林さだお、いしいひさいちの漫画があったりもしたのだから)

そんな宇宙人に怯える日々を過ごしながら、私を宇宙人嫌いにさせる決定的な事件が起こる。
かの有名な「小学一年生」という雑誌の巻末に
「恐怖!グレイ(宇宙人)はこんな奴!」
という、これまた何だかリアルなイラストが掲載されていたのだ。
見るのも嫌だったので、私は怖がり、小学一年生なのに、小学一年生を自分の目の届かない場所に置いた。
その夜である。姉がいたずらで、私のベットの上にその宇宙人のイラストを貼り付けていたのだ。
激怒した。たぶん泣いていた。
悲しみにくれながら、あの鋭い、何考えてんだか一向に読み取れない眼光を恐れながら、私は寝た。
そして夢を見た。

母と買い物帰り。薄暗い夕暮れ。
上空には既に星が出ていたが、地平線には真っ赤な太陽の残光が残っていた。
急に母が楽しげに、遠くに向かって手を降りだした。
何事かとその方向を見ると、上空には光り輝く物体。
紛れも無くUFOだった。
そこから一筋の光が遠い地平線に向けて照射され、何かが降りてくる。
私は怖くて怖くてたまらなくなり、母に早く帰ろうと腰のあたりを引っ張った。
しかし、母は笑顔で手を降り続けている。
だめだ、逃げないと。
そう思ったが否、光の筋からあのグレイがぼんやりと蛍光緑に発光しながら降下してきた。
私は泣き叫んだ。母を恨んだ。何故笑顔なのかと。
グレイは1人、2人と増えていく。
阿鼻叫喚。
気がつけば夕日はすっかり落ちきり、UFOの光と怪しく光るグレイの緑と、笑顔で手を振り続ける母の笑顔以外この世にはない。
もうダメだ、私は一人でも逃げようと暗闇に向かって走りだした瞬間、眼前に、小学一年生に掲載されていたアレがニタリと笑っていたのである。

起きた。まだ夜だった。汗が凄い。姉は寝ていた。
たまらずリビングへ向かうと、父と母がご飯を食べながら、「笑うセールスマン」を見ていた。
それも怖かったが、眼前のグレイに比べればまだ怖くなかった。
いつも通りの風景だったからだ。
(でもその日から、笑うセールスマンも見るのが怖くなった)
次の日から、姉と寝る場所を変えてもらった。

25年前に見た夢をここまではっきりと覚えているのも不思議だ。
(あとはっきり覚えているのは、高校時代に見た、ヤクザに追いかけられて逃げ付いたお店にいたのが赤井英和で、赤井英和が「おう、遅かったやないか」と私を温かく迎え入れてくれ、しかもどうやら赤井英和は私の父である、という夢だ。夢の最中にこれは夢だと気づきながらも、赤井英和とのトークを楽しんだ)

いつのまにか怖がりは解消されていき、宇宙人も幽霊も暗闇も怖くなくなった。
怖いのはゴキブリと貧乏と女になった。

そして昨晩の夢であるが、内容を書くと
「可哀想に、橋本は頭が可怪しくなってしまったのかもしれない・・・」
と思われそうなのでやめておくことにする。
こんだけ引っ張っといて何だよって話なんだが、正直自分の頭の中を随分疑ったので、人に言うとよっぽどアレな感じだという事がわかる。
今日一人だけその夢の話をしたら「つ、疲れてるんだね」と言われて話が終わってしまったから、大して面白くもないのである。
じゃあブログじゃなくて日記に書けよって感じだが。

ただあまりに気になったので、ネットで夢占いなるものをしてみた。

「幸運のサイン」

おいおい、嘘でしょう。
あれだけ恐ろしくて、夢の中で、というか現実社会でも、ましてや舞台上でもあんなに大声を出した事がない状態だったのに、だ。

気になったので違うサイトでもう少し調べてみると

「遅れている事があり、不安」

これだ。

さて、台本の続きを書きます。
いや、スケジュール的には遅れてないんだけど、何となく遅れている気がしているのだろう。

幽霊怖い。