「惑星Xの王子さま」の事とか(橋本)

公演が10日後に迫っているんですけど、所謂稽古というものは週に1度だけです。
本当にそんなので公演として成立するのかと聞かれると少し耳が痛い気もするのですが、多分大丈夫だと思います。
演出家が自身の作品に「多分」とは何たる事か、と言われるかと思うのですが、
本公演で3ヶ月みっちり稽古して自信作だと思えるものが出来ても、やはり「多分」からは逃れられないのではないかと、最近よく思います。

観客全員に全く同じ感想を促す、それがお金をいただいて舞台の上で何かを伝えるものとしての責務であるのでしょうが
「私の作品」なるものを10年も書いていると、毎度毎度全米を泣かせるわけにも行かない(そもそも出来ないんですけど)。
ここ1年で上演してきた短編公演とリーディング公演は、できるだけ観客の希望から遠ざけた形で上演してきたつもりです。
観客の面白い、を疑ってみる。
面白いを信じて作った作品に作った私が裏切られたのだから、再度疑うところからはじめる。
相変わらず遠回りな感じですが、せっかちな私はすぐに一足飛びをしたがるので、なるべくゆっくり自分の足取りを辿ります。

なんだか言い訳染みてきましたが、この作品自体の趣旨として週一回の稽古で作る事が近道になっているはずです。
食材が新鮮ならば、生で食べたいじゃない。
なるべく美味しく、なるべく斬新に調理する事より、今回はできるだけ新鮮に保ちながらも形を損なわない様にする。
そういう方法があるのではないか、という仮定のもとに作っております。
なので、舞台に上がる人はとても不安なので、きっと宣伝をしないでしょう。
私はなるべく見て欲しいと思っています。
こういう舞台が溢れかえって欲しいとさえ願っています。

俳優について考えてきた日々も、この公演で一区切り。
年末年始の本公演は、あくまで俳優はひとつの食材に過ぎないと言い切らないといけないので、この公演だけはなるべく俳優を生で食していただける様がんばります。
虫がついていても、そういうものです。美味しいでしょう、と言いたいです。
だって俳優はきっと自分が美味しいはずだと思っているから舞台に上がるんでしょう?
もっと美味しく食べれる調理法があるんですけど、今回は生で食べてみてください。
少し塩を振りすぎたかもしれませんけど。

惑星Xとは、ある惑星が他の惑星の軌道に対して歪に周回しているとき、ここにXという星があれば、その歪な軌道の説明がつく!というときに用いられる架空の星です。
架空の星Xの王子さまは、なにを思ったかお芝居をはじめた様で、自分と同じくお芝居をしている人が地球にいると知って興味が湧き、やってきちゃった、という設定です。
架空の星の王子さまは、前回幽霊’に出てもらった福井千夏ちゃんにやってもらってます。
私を筆頭にした地球の住人達はとても自由なので、彼女はとても窮屈そうです。
でもその窮屈な表情の先にこそ、未来があるのではないかと、最近よく思います。
我慢しろ、という事ではありません。
その表情を浮かべながらも、先へ進む足取りが途絶えない俳優が近くにいる限り、私はまたイヂワルな本を書きたくなるんだと、最近気付きました。
1年のリハビリを経て、演劇を楽しめる様になってきました。
楽しませるよ。本公演は。私も。あなたも。

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